頭痛外来では慢性的に片頭痛を訴える患者さんが多い。片頭痛を繰り返しているうちに頭痛頻度が増えて行く場合と、市販の頭痛薬を飲み続けているうちに、それがほぼ毎日となり、しかもだんだん薬の効果がなくなって行く場合がある。後者が圧倒的に多く、薬剤の使用過多による頭痛(medication overdose headache - MOH)と呼ばれる。MOHの特徴は以下の通りである。
☆定期的に毎週3日以上、頭痛薬を飲んでいる。
☆薬を増やして飲んでも、だんだん効き目が悪くなる。
☆頭痛で目が覚める、もしくは、朝起きた時から頭痛がする。
☆片頭痛の既往があることが多い。
市販の痛み止めとしては、イブプロフェン、ロキソニン、カロナール、SG顆粒などが多いが、これらのうち成分が単独のものより多剤のものやカフェインが入った複合薬物(*)の方がMOHになりやすい。片頭痛に一番有効とされているトリプタン系の薬剤でMOHになる患者さんは少ない。頭痛薬の使用過多の目安は、単一薬剤の場合1ヶ月に15日以上、複合薬剤の場合1ヶ月に10日以上の服用を、3ヶ月以上続けた場合である。
治療の原則は、過剰使用の頭痛薬を中止し、片頭痛の予防薬を毎日服用し慢性化の悪循環を断つことである。予防薬は少なくとも3ヶ月以上続けないと効果は出ない。また、予防療法は、早めに開始した方が望ましい。片頭痛発作が月に2回以上、あるいは生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある場合は、予防療法を考えてみるのが良い。
予防療法を行なっている間にも、片頭痛発作が出現するが、その際にはトリプタン系薬剤や乱用薬剤以外の頭痛薬の内服で対処する必要がある。
(*)カフェインの入った頭痛薬:ロキソニンSプレミアム、イブA、イブA EX、イブクイック、イブクイックDX、ナロンエースR、T、バファリンプレミアム、バファリンルナi、サリドンA、セデスハイ、ナロン、ノーシン、ノーシンホワイトなど
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