物忘れ

誰でも歳をとると記憶の低下を自覚します。そして自分は認知症ではないかと心配し病院を訪れます。認知症は、はじめのうちは加齢によるもの忘れとの区別がつきにくい病気です。しかし加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れにはいくつかの違いがあります。以下に簡単に両者の違いを記載します。最も大きな違いの一つは、認知症によるもの忘れは体験のすべてを忘れてしまうのに対し、加齢によるもの忘れは体験の一部を忘れているという点があげられます。
  東京都高齢者施策推進室「痴呆が疑われたときに―かかりつけ医のための痴呆の手引き」1999より引用・改変

また認知症の前段階と言われるMCIの定義も記載しておきます。

認知症によるもの忘れ

体験の全体を忘れる        

記憶障害に加えて判断の障害や遂行機能障害(料理や家事などの段取りがわからなくなるなど)がある

もの忘れの自覚に乏しい

探し物も誰かが盗ったということがある

見当識障害(時間や日付、場所などがわからなくなる)がみられる

しばしば作話(場合わせや話のつじつまを合わせる)がみられる

日常生活に支障をきたす                         

進行性である 

加齢によるもの忘れ

体験の一部分を忘れる

記憶障害のみがみられる

(人の名前を思い出せない、度忘れが目立つ)                                                   もの忘れを自覚している  

探し物も努力して見つけようとする

見当識障害はみられない

作話はみられない

日常生活に支障はない

きわめて徐々にしか進行しない    

MCI (Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)とは健常者と認知症の人の中間の段階(グレーゾーン)にあたる認知障害です。MCIでは、認知機能に問題が生じてはいますが、日常生活には支障がありません。MCIの原因となる原疾患を放置すると認知症へ移行すると言われています。以下がMCIの定義にです。

1.記憶障害の訴えが本人または家族から認められている

2.日常生活動作は正常

3.全般的認知機能は正常

4.年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する

5.認知症ではない

当クリニックでも認知症の診断および投薬を行っています。認知症のスクリーニング検査として、長谷川式簡易知能検査あるいはMMSEを用いています。また、頭部CTで、海馬、前頭葉や側頭葉などの萎縮の有無をチェックしています。初期の認知症の診断には、SPECT(脳血流検査)をおすすめすることがあります。認知症と診断した場合には、アリセプトなどの認知症状の進行を抑制する抗認知症薬の投与も行っています。
60歳を過ぎ、新しいことが覚えられないとか記憶が悪くなっているなと感じている方や、ご家族の物忘れが気になっている方はぜひご相談ください。