丸ノ内なかごみクリニック
Marunouchi Nakagomi Clinic
脳神経外科 内科
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めまい・しびれ・脱力(麻痺)
めまい
めまいとは空間における体の位置や姿勢に対する自己の見当識が実際と異なって認識された時に生じる感覚です。回転感や一定方向への運動感を伴う場合は回転性めまい(vertigo)、そうでないものは浮動性めまい(dizziness)という。前庭系、深部知覚系、視覚系のミスマッチで生じるが、小脳系、錐体外路系、錐体路系の異常によることもある。主なめまいは以下の1−3の3つに分類されるが、他に、頸性めまいや心因性めまいもある。また、薬剤でもめまいがおきることがある。
1 末梢性めまい:内耳や前庭神経に関係するめまい。主に回転性めまいで、通常吐気や嘔吐を伴う。
2 中枢性めまい:脳幹、小脳、大脳に関係するめまいである。
両者の鑑別には、めまい以外の症状や神経徴候の有無が重要である。
3 めまい症:原因疾患がなくめまいを主訴とするもの。
更年期以降の女性や高齢者に多い。仕事上のストレス、家庭内問題、介護ストレスなどが誘因となる。頭重感、肩こり、疲労感などもある。前庭系全体の加齢変化や脳の循環障害が原因であると考えられている。
4 頸性めまい:頸椎捻挫後や緊張型頭痛をもっている人に多い。ふらつきやフワフワ感を訴える。
5 心因性めまい:東日本大震災後に地震でないのに揺れている感じを経験した人は多いと思われる。前庭系が過敏になっているためで、揺れていないの揺れだと感じてしまう。これも一種の心因性めまいである。
6 薬剤性めまい:抗てんかん薬、抗菌薬、消炎鎮痛薬、利尿薬などの服用でもめまいが出現する。
・失神性めまい:起立性調節障害の時におきる「フウー」とする感じで、いわゆる立ちくらみから意識消失まである。
・めまいをおこす代表的な病気
<末梢性めまい>
メニエール病:
耳鳴り、難聴、耳閉感などの蝸牛症状を伴う回転性めまい。初発は60歳以下が多い。
めまいは30分以上、数時間から1日続き、日をおいて繰り返す。悪心・嘔吐を伴い臥床することが多い。内リンパ水腫が原因と考えられている。難聴・耳鳴 通常一側性であるが、両側性もある。難聴初期は可逆性である。
聴力検査 低音域で変動する感音性難聴。平衡機能検査で内耳障害がみられる。
前庭神経炎:
風邪などの感染が前駆することが多い。ウイルス感染による炎症と考えられているが、証拠は乏しい。前庭症状のみで蝸牛症状なし。突然発症し2〜3日激しい回転性めまいが続き、吐気や嘔吐を伴う。1週間程度は歩行もフラフラするが、徐々に軽快し、2−3週間かけて改善する。
良性発作性頭位めまい:姿勢の変換後出現するめまい。病態は以下の2通り。
半規官膨大部(クプラ)への粒子沈着 クプラ結石症
半規官内への浮遊粒子 半規管結石症
① 特定の頭位(めまい頭位)で回転性、動揺性のめまいが誘発される。
② めまいは短時間(1分以内)で消失する。
③ めまい頭位を繰り返すことにより、誘発されるめまいは軽くなりやがて消失する。
④ 他の脳神経症状はみられない。
治療しなくても通常は1ヶ月程度でなおる。理学療法(浮遊耳石置換法)が有効である。
注)めまいが長時間続く場合、頭を動かした時にフーとするとか、クラーッとするとか、回転性ではない場合、あるいは頭がボーッとしているとかいうものは「良性発作性頭位めまい」ではない。
突発性難聴:
突発性難聴の約40%にめまいが伴うと言われている。
<中枢性めまい>
椎骨脳底動脈循環不全:
中年以降の動脈硬化の強い患者に多く、頸椎の変形が高度だと頭部の回転でめまいが出現する。MRAやCTAで椎骨動脈系の精査が必要である。
脳梗塞・脳出血:
小脳や脳幹の梗塞や出血はめまいをおこす。CTやMRI画像で梗塞や出血がないことを確認する必要がある。小脳や内耳道周囲の腫瘍もめまいをおこすことがある。
注)小脳梗塞では、脳腫脹が高度になり意識障害が出現すると、減圧開頭術を行わないと救命できない場合がある。
Wallenberg(ワレンベルグ)症候群:
回転性めまい、頭痛、悪心・嘔吐。後下小脳動脈あるいは椎骨動脈の閉塞による延髄外側の梗塞が原因である。閉塞側の、顔面の温・痛覚消失、発声・嚥下困難、運動失調、反対側の体幹や上下肢の温・痛覚消失(感覚解離)
<頸性めまい>
(狭義)首を回す、ひねる、伸ばす、そらすなどの動作をした時に、椎骨動脈の血流が低下して起きるめまい、これを椎骨脳底動脈循環不全というが、このうちで頸椎の異常(頸椎や椎間板の変性やズレなど)が原因であるもの。浮動性めまい(フワフワするめまい)が多い。また、数秒から数分続くめまいに、頭痛、頚部痛、吐き気、冷や汗などを伴うことあり。
(広義)他に、椎骨動脈の動脈硬化による血流不全
首や肩の凝り
交感神経の異常(バレリュー症候群)
頸椎捻挫(外傷性頚部症候群)、変形性頸椎症、緊張型頭 痛、straight neck:
首の筋肉からも、頭の位置についての情報(筋肉の伸び縮みの具合を筋紡錘ということろで感知している) が常に脳に送られています。首や肩がひどくこったり、後頭部にしめつけられるような頭痛が生じた場合、ふらつき感を自覚することがよくありますが、これは、やはり首からの誤った情報が脳に伝えられるからです。
高齢者に多い「頭がフラフラ」「歩くとフワフワ」する感じ:
高齢者によくみられる頭のふらつきは、各種検査ではっきりした原因がみつからないことから、主な原因は体の老化と考えられていますが詳しいメカニズムはわかっていません。以下のように考える人もいます。
「平衡機能は、眼、耳(内耳)、下肢からの情報によって維持されています。眼からの情報は視神経、内耳からの情報は脳幹、下肢からの情報は脊髄を経由してそれぞれ大脳に伝えられ、ここで情報の統合が行われています。高齢になると、視力低下や眼疾患などで眼からの情報が迅速、適切に伝わりにくくなります。また、下肢の筋力低下などのため下肢からの情報も同様です。耳からの情報も難聴や三半規管の機能低下で、迅速、適切に伝わりにくくなります。その場合、大脳は域値をさげて情報の遅れや不適切さに対して反応しようとします。域値をさげると、悪いこともおきてきます。情報が伝わってきてないのにきたように判断してしまうことです。これが頭のふらつきだというものです。」
、頭の位置についての情報(筋肉の伸び縮みの具合を筋紡錘ということろで感知している) が常に脳に送られています。首や肩がひどくこったり、後頭部にしめつけられるような頭痛が生じた場合、ふらつき感を自覚することがよくありますが、これは、やはり首からの誤った情報が脳に伝えられるからです。
脳の病気、例えば脳梗塞、脳出血、脳腫瘍などでも、それが平衡機能に関する部位を障害していれば頭のふらつきがでることがあります。これらの場合は簡単に画像で診断できます。しかしながら、頭がふらつく高齢者のほとんどに以上に述べてような病気はみつかりません。では、何もないかと言えば、頭部MRIでみてみると加齢による脳の変化がいろいろ見られます。それらを挙げてみます。
1 大脳や小脳の萎縮
2 それのみでは症状を出さないような複数の微小脳梗塞や微小出血
3 大脳深部や脳幹に認められる高信号域 (慢性虚血性深部白質病変といわれ、動脈硬化などによって脳血流が低下した状態とされています。)
また、MRAやエコー検査で脳を影響する動脈に狭窄が認められることもあります。
脳萎縮や脳虚血病巣などが存在すると、各種の刺激や情報に対して脳は迅速かつ適切な反応ができなくなります。こういったことも頭のふらつきの原因のひとつと考えられています。
・めまいの診断
問診、神経学的検査、聴力検査、画像検査(頭蓋単純X−P、腰部CT、頭部MRIなど)、髄液検査、聴性脳幹反応などを総合して行う。
神経学的検査の例:
簡易聴力検査(音叉)、眼振の有無、ロンベルグ徴候、歩行障害の有無
指ー鼻試験、反復拮抗運動不能(dysdiadochokinesis)
・めまいの治療
原病の治療に加え、禁食、輸液や炭酸水素ナトリウムの静注、抗めまい薬や循環改善薬の投与が基本となる。
<急性期治療>
点滴:めまいがひどい場合は点滴を行う。めまい症、良性発作性頭位めまい症、メニエール病でも同様。
輸液200mlに炭酸水素ナ トリウム:メイロン注®(7%)1A〜2A 入れて点滴、あるいは、メイロン注®(7%) 250ml 点滴
悪心・嘔吐などあれば
メトクロプラミド:プリンペラン注®(10mg) 1回10mg 静注、あるいは輸液中へ
ジアゼパム:セルシン注®(5mg) 1回5mg 筋注
点滴を要するほどでない場合は内服
ジフェンヒドラミン・ジプロフィリン配合:トラベルミン® 1T 頓服
ジメンヒドリナート:ドラマミン® (50mg) 1T 頓服
悪心・嘔吐などあれば
ジアゼパム:セルシン®(2mg) 1T 頓服
ドンペリドン:ナウゼリン®(10mg) 1T 頓服 妊婦は禁
* メニエール病の急性期の治療:内リンパ水腫軽減のため内服で使用される。
イソソルビド:イソバイド® 90ml 3x あるいは、メニレットゼリー® 90g 3x
<発作間欠期治療>
過労や睡眠不足、喫煙と飲酒は避け、適度なスポーツに汗を流す、趣味を楽しむ。肉体的、精神的ストレスをためない。内服は数ヶ月持続 発作が2〜3ヶ月間ないことを確認してから中止。
使用される薬剤:
循環改善薬
ベタヒスチンメシル酸塩:メリスロン®(6mg) 3〜6T 3x
アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物:アデホスコーワ顆粒® 3g 3x
ジフェニドール酸塩:セファドール®(25mg) 3T 3x
カリジノゲナーゼ:カルナクリン®(50単位) 3T 3x
イブジラスト:ケタスカプセル®(10mg) 3C 3x
イフェンプロジル酒石酸塩:セロクラール®(20mg) 3T 3x
自律神経調整 発作予防の観点から望ましい
トフィソパム:グランダキシン®(50mg) 3T 3x
精神安定薬
アルプラゾラム:コンスタン®(0.4mg) 3T 3x
ロフラゼブ酸エチル:メイラックス®(1mg) 2T 2x
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)うつ症状がある場合に使用。
パロキセチン塩酸塩水和物:パキシル®(20mg) 1T 1x 夕食後
フルボキサミンマレイン酸塩:デプロメール®(25mg) 2−4T 2x
副腎皮質ステロイド 1−2ヶ月治療しても効果がない場合に使用。
数週間持続する。副作用の高血圧、糖尿病に注 意する。
プレゾニゾロン:プレドニン®(5mg)2T 1x 朝食後
・めまい症の内服治療例
メリスロン®(6)3T 3x
アデホスコーワ顆粒® 3.0g 3x
セファドール®(25)3T 3x
循環障害が疑われる場合は
ケタス® 3C 3x
神経興奮に対する沈静化作用を期待して
トラベルミン® 1T 頓服
心配や不安が強い場合(自律神経調整薬)
グランダキシン®(50mg) 3T 3x
<漢方の処方>
加味逍遥散、苓桂朮甘湯、苓桂朮甘湯合四物湯、当帰芍薬散、呉茱夷湯、真武湯など
メニエール病には半夏白朮天麻湯、柴苓湯、苓桂朮甘湯、苓桂朮甘湯合四物湯
<起立性低血圧に対する治療>
めまいではなく、立ちくらみや立位での暗黒感では、以下のいずれか あるいは組み合わせて使用する。
ミドドリン塩酸塩:メトリジン®(2mg) 2−4T 2x 朝・昼食後
アメジニウムメチル硫酸塩:リズミック®(10mg) 2T 2x 朝・昼食後
ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩:ジヒデルゴット®(1mg) 3T 3x
しびれ
しびれは感覚障害の一つで、大脳皮質、視床、脳幹、脊髄、末梢神経の各障害によって生じる。他に、ヒステリー身体表現性障害によるしびれがある。日常的にみられる手や足のしびれの原因としては、頸椎疾患や末梢神経疾患によるものが多い。
・感覚障害のいろいろ
<大脳皮質>
障害された大脳皮質に対応する部位に感覚障害が出現する。識別的触覚の障害が主で、痛覚の障害は少ない。
<視床>
触覚ならびに温・痛覚の障害がおきる。視床内の局在が近いことから、しばしば、手ー口型、または手ー足ー口型の障害となる。
<脳幹>
触覚ならびに温・痛覚の障害がおきる。内側毛帯の障害によって触覚、深部感覚障害が、脊髄視床路の障害によって温・痛覚障害がおきる。三叉神経脊髄路核の障害では、タマネギの皮状( onion peer )の感覚障害が出現する。
<脊髄>
前索の障害によって触覚ならび温・痛覚障害が、後索の障害によって深部知覚障害、触覚障害が出現する。
<末梢神経>
その神経の局在に応じた感覚障害が出現する。(参考:デルマトーム)
デルマトーム:末梢神経とその対応する皮膚の部位(C:頸髄神経、Th:胸髄神経、L:腰髄神経、S:仙髄神経)
C2:後頭部上部 C3:後頭部下部 C4:肩(肩峰) C5:肘関節外側C6:母指・示指(1,2指)~前腕外側 C7:中指(3指) C8:小指(5指)Th1:前腕内側 Th4:乳頭 Th6:剣状突起 Th10:臍L1:鼠径部(~大腿内側)L2:大腿前面 L3:膝 L4:脛骨内果L5:下腿外側~足背 S1:足~足部外側~足底 S2:膝窩~大腿後面S3:坐骨部分 S4:肛門
<上肢のしびれ>
神経根あるは脊髄髄節の障害
感覚障害
C5:肩、上腕外側
C6:前腕橈側、第1、2指
C7:第3指
C8:第4、5指、前腕尺側
運動障害
C5:肘屈曲
C6:手関節の背屈
C7:肘伸展、手関節の掌屈
C8:手指の屈曲
腱反射
C5:上腕二頭筋反射
C6:腕橈骨筋反射
C7:上腕三頭筋反射
頸椎部での脊髄圧迫
C3/4:2/3の症例で全指尖にしびれ
C4/5:半数の症例で第1〜3指にしびれ
C5/6:半数の症例で第3〜5指にしびれ
C6/7:指のしびれはおきないことが多い
<下肢のしびれ>
L3/L4:大腿神経に沿って大腿前面から膝内側にかけて放散痛がある。
L4/L5 L5/S1:座骨神経に沿って大腿後面から下腿外側後面、さらには足指に放散痛がある。足背の放散痛はL5、足底ならL1である。
膝蓋腱反射はL4、アキレス腱反射はS1である。
筋力は足関節の内反がL4、足関節背屈、足趾背屈がL5(足趾5本反ってL5と覚える)。足関節外反と底屈、足趾底屈がSIである。内反は内側に足底を向ける動作であり、外反は外側に足底を向ける動作で、つま先立ち(SI)と蹊立ち(L4、L5)ができるかをみる。
<診断>
問診、神経学的検査で障害部位を推定し、画像検査を行う。
頸椎X−P 腰椎X−P
頭部CT、頸部CT、3DーCTA
頭部MRI ・ MRA、頸部MRI・MRA
脳血管造影(DSA)
<治療>
原疾患の治療を優先する。
薬物治療
ビタミンB12:メチコバール®(500) 3T 3x
痛みを伴うしびれ
クロナゼパム:リボトリール®、ランドセン® 1回0.5〜1mg 1日⒈〜3回分服 むずむず足にも
カルバマゼピン:テグレトール® (100)あるいはテグレトール®(200) 2T 2x
ガバペンチン:ガバペン® (200) 2T 2x など
神経障害性疼痛合併
プレガバリン:リリカ® (75) 2C 2x
ムズムズ足(レストレスレッグ)症候群
脚に不快な感覚が現れ、じっとしていられないことを特徴とする慢性疾患。脳の鉄欠乏により、夜間に中枢ドパミン神経伝達が低下して脊髄の神経細胞が興奮状態となり、下肢の筋肉に興奮と異常感覚が発現するものと考えられている。家族歴があることも多い。鉄欠乏性貧血、妊娠、腎不全、末梢神経障害などによる2次性のものもある。
特徴
① 脚を動かしたい強い欲求、下肢の不快な異常感覚
② 安静で発現、増強
③ 運動により改善
④ 夕方.夜間に増強
症状
じっとした姿勢や横になったりしていると主に下肢の部分に(患者によっては、脚のみならず腰から背 中、腕や手など全身にまで現れる)「むずむずする」・「じっとしていられない」・「痒い」だけでなく、「ピンでなぞられているような」・「針で刺すような」・「火照るような」・「蟻やミミズなどの虫が這っているような」などの異様な感覚が現われ、時には「振動」のような感覚まで感じたりする場合もある。また「激しい痛み」を感じるなどさまざま。この苦しさは「脚の中に手を突っ込んでかき回したいぐらい苦しい」と表現する患者もいる。患者はこれらの感覚を抑えるため常に脚を動かしたり身体をさすらなければならない。
診断
上記症状がある
睡眠中に下肢の周期的なけいれん様の不随意運動(周期性四肢運動)が認められる
ドパミン製剤治療に明らかな効果がある
治療
非薬物治療
血清フェリチン値が 50ng/ml未満の場合、鉄剤補充
抗精神薬の中止
睡眠前の運動
薬物治療
中等度以上
ビ・シフロール®(0.125)1T 1x 就寝2−3時間前 6Tまで
ニュープロパッチ®(2.25)1枚 24時間貼付 3枚まで
症状が強くなったりオーグメンテイションあれば
レグナイト®(300)2T 1x 夕食後
適応外使用
ガバペン®(200)2−4T 1x 就寝2−3時間前
リボトリール®(0.5)1−2T 1x 就寝前
耳介の発赤や痛みがある場合 ハント症候群を疑い
⑤バルトレックス®(500 mg) 6T 3x 7日間
脱力(麻痺)
脱力(麻痺)が起きる原因には、大別すると、脳、脊髄、末梢神経があります。脳が原因の場合、片側だけに障害がおきることが特徴です(片麻痺)。一方、脊髄の障害ではその部位や病変の程度により片側の場合あるし、両側が障害される(対麻痺)こともあります。末梢神経の障害では麻痺の近くで神経が障害される場合が多い。
<脳の障害>
障害される部位やその程度に応じて、顔面神経麻痺(中枢性)、呂律障害(構音・構語障害)、嗄声、手足の麻痺が出現する。手足の麻痺は錐体路が梗塞、出血、腫瘍などで障害された場合、反対側に麻痺が出現する。
<脊髄の障害>
片側性の障害の場合は、障害された部位以下の麻痺が生じる。両側性の障害の場合、障害部位以下の麻痺(対麻痺)が生じる。
<末梢神経の障害>
神経根を含め末梢神経の障害では、その支配領域に脱力(麻痺)が生じる。
・代表的な末梢神経障害
<橈骨神経麻痺>
上腕中央部では橈骨神経が上腕骨のすぐ後ろを通過するので、外からの圧迫を受けやすい。
運動の障害:上腕中央部の傷害では、手首の背屈と手指の付け根の関節(MP関節、中手指骨関節)が伸ばせなくなくなります(伸展不能)。手首と指が下がった状態になるので、下垂手(drop hand)呼ばれます。第1関節(DIPとIP)と第2関節(PIP)は伸展可能です。
肘関節の屈側で傷害されると、手首の背屈は可能ですが、手指の付け根の関節の伸展ができなくなります。指のみが下がった状態になるので、下垂指(drop finger)と呼ばれます。
感覚の異常:上腕中央部の傷害では、第1・2・3指の背側を含む手背から前腕の母指側の感覚障害
肘の屈曲での後骨間神経の障害では感覚障害は出現しない。
治療:
局所の安静、薬剤内服、必要に応じ装具(cock-up splint)、運動療法など。
<尺骨神経麻痺>
尺骨神経が傷害されると巧緻運動障害(細かい動きが上手くできない)が生じます。尺骨神経麻痺の典型例では、母指球以外の手内筋の筋萎縮と鉤(かぎ)爪変形(鷲手変形)が生じます。尺骨神経の傷害がどこで生じているかによって症状が異なります。肘より上のレベルの外傷による傷害では麻痺の程度はさまざまですが、前腕の尺側と小指・環指小指側1/2の掌背側の感覚障害と環小指の屈曲障害、母指球を除く手の中の筋肉が麻痺し巧緻運動障害が生じます。かぎ爪変形も生じます。ギヨン管部での症状は、感覚障害だけのもの、第1指間のみがやせて感覚障害がないものなどいろいろな症状を呈します。
診断:感覚の障害がある時は、皮膚の感覚障害が尺骨神経の支配に一致していて、Tinelサイン(神経傷害部をたたくとその支配領域に疼痛が放散する)があれば傷害部位が確定できる。手内筋の筋萎縮による母指球筋以外の筋萎縮とかぎ爪変形があれば診断可能です。また、Froment(フローマン)サイン(両手の母指と示指で紙をつまみ、反対方向に引っ張る時に母指の第1関節が曲がれば陽性)が陽性になれば診断がつきます。
確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査など必要に応じて行います。
治療:局所の安静、薬剤内服、運動療法など。
<手根管症候群>
手関節部にある手根骨と横手根靭帯で囲まれたトンネル(手根管)内で正中神経が圧迫され生ずる。妊娠_出産期や更年期の女性が多く罹患する。初期には第2.3指がしびれ、痛みがでるが、最終的には第1から第4指の親指側の3本半の指がしびれる。急性期には、こnしびれ、痛みは明け方に強く、眼をさますと手がしびれたり痛む。手を振ったり、指を曲げのばしするとしびれ、痛みは楽になる。手のこわばり感もある。進行すると第1指の付け根(母指球)が萎縮し第1指と第2指できれいな丸(OKサイン)ができなくなる。
診断:母指球の筋力低下や筋萎縮をみる。
Tinel徴候:手首(手関節)をたたくとしびれ、痛みが指先に響く。
Phalen Test:手首を直角に曲げて手の甲をあわせて保持し、1分以内にしびれ、痛みが悪化するかどうかをみる検査法。
電気生理学的検査としては、筋電図検査や精通神経の伝導速度の測定などがあります。
治療:
消炎鎮痛剤やビタミンB12、塗布剤、局所の安静(運動や仕事の軽減やシーネ固定)、手根管内腱鞘内注射など。 難治性のものや母指球筋萎縮がある場合、腫瘤がある場合などは手術が必要になる。
・顔面神経麻痺
特発性顔面神経麻痺(Bell麻痺)
側頭骨内顔面神経節である膝神経節からの単純ヘルペスウイルスの再活性化による。帯状疱疹も耳帯状疱疹や難聴、めまいと伴わずベル麻痺として発症することがある。発症が急性であり、一側性に顔面表情筋の麻痺が生じるため診断は用意である。随伴症状として、耳介や耳後部の疼痛、味覚異常、聴覚過敏、涙や唾液の分泌低下が認められることがある。
<急性期治療>
軽症例
①メチコバール®(500 μg)3T
②ユベラNソフトカプセル®(200 mg) 3C
③プレドニン®(5mg)0.5 mg/kgで朝1x 10日間で漸減終了
④ヒアレイン点眼液0.1% 1回1滴 1日5〜6回
中等、重症例
①、②に加え
③プレドニン®(5mg)1mg/kgで朝1x あるいは2x 5−7日連日(最大1日60mg) その後は漸減し10日〜2週間で漸減し終了する。
⑤バルトレックス®(500 μg) 2T 3x 5日間
耳介の発赤や痛みがある場合 ハント症候群を疑い
⑤バルトレックス®(500 mg) 6T 3x 7日間
<慢性期治療>
発症3週間を経過しても改善傾向がない場合、顔面表情筋の自己マッサージなどのリハビリを行う。
①メチコバール®(500 μg)3T
②ユベラNソフトカプセル®(200 mg) 3C
4ヶ月までに寛解しない場合、病的共同運動や拘縮などの後遺症が残存する。症状固定には1年以上要する。後遺症に対してはボトックス注射や形成外科的な再建術を行う。